地球温暖化防止と住宅
1999年3月、次世代省エネルギー基準が告示されました。
これは地球温暖化防止へむけて国レベルでの省エネルギー化を積極的に進める姿勢を表しているといえます。
1997年の地球温暖化防止京都会議:COP3で先進国38カ国全体で二酸化炭素を始めとする温室効果ガスの「2008年から2012年」の平均排出量を 1990年レベルより少なくとも5%削減することを目標として、同期間の削減目標が各国ごとに設定されました。
日本は1990年排出レベルの6%削減目標が決定されました。現状のままでいくと2010年のCO2の排出量は3.7億トン(93年レベルの1.3倍)にもなります。
地球の温暖化により100年後には、平均気温が2℃、平均海面が約50cm上昇、もし日本の海面が30cm上昇すると、砂浜の60%が失われるといわれています。
また、集中豪雨や干ばつの増加、台風の強大化、さらに熱帯の病気マラリアの北上など、深刻な状況が予測されています。
我国のエネルギー消費は、2回の石油危機によりいったん低くなり、80年代後半から再び高い伸びを示しています。
とくに、家庭やオフィスなどの民生部門と運輸部門の増加が大きくなっています。
その要因には、エアコン・冷蔵庫などの家電製品の伸び等快適・利便性を求めるライフスタイルの変化が影響しているようです。
電気製品の中で、冷蔵庫、テレビ、掃除機は100%の普及をみていますが、ルームエアコン電気カーペット等暖房器具は急激な伸びを示しています。これはとりもなおさず電気エネルギーの消費の拡大を示しています。それらを入れる器としての住宅の熱性能は依然悪く、暖房熱や、冷房熱を保持することが出来ず垂れ流し状態といっても過言ではありません。
住宅の省エネルギー問題は寒冷地だけの問題ではなく、温暖地の問題といえます。
温暖地の住宅は暖房のみだけでなく、夏の冷房エネルギーも多く使うからです。
省エネルギーは小さなことの積重ねです。日本の人口の70%は温暖地と言われる住宅金融公庫でいうⅣ地域に集中して住んでいます。
住宅コストは建築から廃棄まで考えるライフサイクルコストで考える時代といえます。
30年程度で建てかえるような家でなく、少なくとも50年、60年という長寿命の家を建てることにより、エネルギーの無駄使いをしないよう、また長期にわたって廃棄しない、環境に負荷をかけない家が求められているのです。
私たちは21世紀に残す地球環境を考えて今できる省エネルギーを推進することが肝心です。
住宅建設においては、高断熱、高気密住宅の普及が、全国的に進むことが地球温暖化防止に貢献することを認識して新築計画をしなければなりません。
高断熱、高気密住宅は高齢化社会が抱えるさまざまな問題、自宅介助、家庭内事故防止、老人医療費問題等の解決の一助になるともいえます。
建築デザイン / 2010年6月16日
21世紀に残す家を考える
新しい世紀が始まりました。
新世紀に生きる私たちにとってこの世紀に解決すべき課題は多く、未来は燦然と輝いていると言える状況ではないようです。
私達の住む地球は温暖化のため、子供や孫、そしてまだ見ぬ子供達に残すべき地球環境として今のままでは悲観的状況あるといえます。
私たちは今、豊かな生活を享受するために、多くのエネルギーを消費し、二酸化炭素を空気中に放出して日々生活しているのが現状です。このままで行くと我が国の2010年の二酸化炭素排出量は、3.7億トンになり90年レベルの1.3倍にもなるとのことです。
地球温暖化を原因とする海面上昇により、国土を失う国もあります。集中豪雨や干ばつの増加、台風の強大化、さらに熱帯の病気マラリアの北上など、深刻な状況が予想されています。オゾン層の破壊により、多くの人々の健康障害が問題にもなっています。この問題に関して難しいのは、私たちは被害者であり、また同時に加害者でもあるからです。
建築にかかわる者として、豊かな生活を省エネルギーで実現する住宅に取り組むことは必然のことです。なぜなら、地球人として省エネルギー問題は地球温暖化防止のため緊急かつ重要な問題であるからです。
家を計画するときに考えなければならない事はいくつもあります。身近な問題として、私達の住環境を取巻く空気汚染、特にVOC汚染(揮発性有機化合物)や、環境ホルモン、また高齢化社会のことも避けて通れない問題です。高齢化社会の問題はひとごとでなく、明日の私たちの問題であるからです。基本的、かつ根本的な理念は、家は家族を守るシェルターであるという事です。妻や子、父や母の健康を守り、命を守り、財産を守らなければなりません。
多くの人が家を新築したことにより、健康障害を起こしています。原因が家にあることに気づかない人も大勢います。家を構成する部材の選定を誤ったためにVOC汚染を原因とするシックハウス症候群と呼ばれる数々の症状が問題となっています。換気装置を設け24時間定量換気することにより自然素材を使用することだけでは解決できない空気汚染と無縁の室内空間を創ることが可能です。
また結露で家が腐ったり、カビダニが原因でアレルギーや、アトピーになるこども達もおおぜいいます。
これらは湿度を下げることで結露やカビ、ダニの発生を抑止することができます。
家の中で万が一にも温度差が原因で死ぬことなどないように家中の温度をコントロールすることも快適生活をおくる上では重要です。便所でお年寄りが倒れたという話もよく聞きますがこれは温度差が原因で[ヒートショック]と言われています。
また毎年約3000人もの人がお風呂の中で溺死しています(人口動態統計による)。
これもヒートショックが原因と思われます。これら数々の問題をクリアーするためには高断熱、高気密、計量換気、省エネルギーで暖冷房の出来る家にすることのみが解決できる唯一の方法と考えています。私の事務所では、家の中では、廊下といわず、便所といわず家中どこでも温度差の少ない家を省エネルギーで実現し一年中5月のようなさわやかな空気の室内環境でくらせることをあたりまえと捉え、その上で使い勝手の良い間取りや仕上げ、デザインを考えています。
25年、あるいは30年の住宅ローンが終わったらまたすぐに建替えなければならないような寿命の短い家でなく、子供や孫の世代まで十分使用に耐えうる住宅であること。省エネルギーで地球にやさしい住宅であること。人にやさしい住宅であること。子供といわず、高齢者といわず、ハンディーをもったひとといわず、すべてのひとにやさしい住宅のための設計すなわち『ユニヴァーサルデザイン』を目指して住宅設計に取り組んでいます。
21世紀に生きる子供たちや、孫たち、そして高齢者、またその予備軍である私たちが、安心して、健康にくらせる住宅を建てるために。
建築デザイン / 2010年6月13日