高断熱、高気密住宅における「気密」について
昨今の住宅の宣伝文句は、阪神大震災後の耐久性、強度、をうたい文句にしたものから、家の換気を取り上げたものにかわり、いまは高断熱、高気密住宅であることをうたったものに変わってきています。地球温暖化防止につながる省エネルギー政策の一環として、政府も住宅政策において住宅金融公庫の貸し出し金利の優遇政策を設けそれを受けるためには、断熱工事の強化をすることが必須となっています。
高断熱、高気密の住宅の定義は4つあり、まず断熱性に優れていること、気密性が良いこと、計画的な換気が行われていること、家全体の暖房及び冷房ができること。以上の4つがすべてそろって始めて高断熱、高気密住宅といえます。
しかしながらこのタイプの住宅の知識を持った技術者や、設計者は少なく住宅会社も断熱材を厚い物にしたから高断熱であるとか、複層ガラスをいれた窓を使っているから高気密住宅であるとか、また集中換気装置を入れているから計画換気ができていると思ったり、とあまりにも現状はというとお寒い状態です。
断熱、気密、換気、暖房の4つの内一番難しいのが気密工事といっても過言では有りません。断熱は断熱性能の良い材料を入れることによりひとまずOKです。ひとまずというのは断熱材の種類によっては断熱材を厚くすることにより壁内結露の問題が急上昇で起こってきます。
ここで壁内結露を防止するために気密工事が大きな役割を持ってきます。
換気については集中換気装置を取り付ければそれで問題が解決するかといえば、そうではなく集中換気装置が有効に働くためにはここでも気密性能が問題になってきます。
気密状態が悪ければいくら素晴らしい換気装置を取り付けても初期性能を発揮できません。
暖房も冷房も気密状態に大きく左右されます。いくら断熱性能が良くても気密状態が悪いと少しの風にも左右され暖めた空気や、冷やした空気が逃げてしまうのです。
以上のように気密住宅ですとエンドユーザーに言うためには、気密状態を数値で表すことによってのみアピールできるのですが、広告をみていると気密のグレードについて書きしるしたメーカーはほとんどないようです。
気密住宅とは複層ガラス入りのサッシュを使用しているから気密住宅ではなく、あくまでも気密工事を施した住宅でのみ気密性能が出るのであり、また気密性能は気密テストを行ってこそ始めて数値として知ることができるのです。
気密性能の概要
気密性能は隙間相当面積、つまり床面積1㎡あたり何平方センチの隙間が空いているのかで表わします。また建物に圧力をかけて家の中の空気が1時間に何回入れ替わるかを表わす換気回数を知ることにより家の性能を知ることができます。
気密住宅というのなら気密テストを行い数値をもって気密レベルを表わすことが必須といえます。
【気密テストでわかること】
■隙間特性値 n がわかります
隙間特性値nは1~2の間になければなりません。特性値nが1に近づくにしたがって隙間の形状は細かなものの集合であることがわかります。nが2に近いと大きな隙間が存在していることがわかります。隙間特性値が2に近い時は不良個所がないか探さなければなりません。
■相当隙間面積(Ccm2/m2)がわかります
住宅の気密性能を示す単位として表されます。住宅の外皮(外壁、屋根、窓、床等)に開いている無数の隙間を合計したものが総隙間面積で、これを床面積で割ったものが相当隙間面積です。値が小さい程、気密性能が良くなります。次世代省エネルギー基準では東北、北海道では2cm2/m2以下を、その他の地域では5cm2/m2以下の性能がもとめられています。換気装置を有効に働かせるためには1cm2/m2以下とすることが必要です。
■漏気回数がわかります
建物から空気を抜いていくことで、建物の外皮に圧力が掛かり強い風が吹いたときと同じような状況が作り出せます。1時間あたりの漏気回数から建物から逃げる熱量がわかります。
建築デザイン / 2010年6月25日
次世代省エネルギー基準と暖房
熱損失係数が3.4Kcal/㎡・h・℃から2.32Kcal/㎡・h・℃になることによる暖房
100㎡の家の場合、室内温度が20℃で外気温が0℃の時に躯体から逃げる熱量は100㎡×2.32Kcal/㎡・h・℃×20℃=4640Kcalとなります。毎時4640Kcalの熱を補えば室温が維持出来るということです。月間の暖房に必要な熱量から、灯油をFFストーブで暖房することにすると4640kcal×24h×30day÷(0.8×8240)×30エン/L=15203円で全館暖房ができます。
実際には室内発生熱や内外温度差日射による取得熱等を考慮すると、月に10000円程度で全室全館暖房が可能になります。現況のほとんどの家は気密性能がない為に自然換気により5回/h程度換気されています。
換気による熱の逃げは換気熱損失=0.3×n×V×Δt
n:換気回数
V:住宅の内容積
Δt:内外温度差
100㎡の家で体積が250m3、外気温が0℃室内温度を20℃とすると総熱損失の内で換気による熱の損失は、0.3×5×250×20=7500Kcal/hとなります。
100㎡×3.4Kcal/㎡・h・℃×20℃=6800Kcal
( 6800+7500 )×24×30÷(0.8×8240)×30/L=46856円となり全館暖房は現実的でなく、個別暖房にならざるおえないのが現状です。
建築デザイン / 2010年6月24日
次世代省エネルギー基準と換気
次世代省エネルギー基準では、必要換気回数が求められ2時間で1回空気をいれかえる必要があります。0.5回/h
【換気の目的】
・新鮮空気の導入
・室内汚染物質の排出
・室内で発生する湿気の排出
・臭気、たばこの煙等の排出
計画換気でなく、自然換気で良いことになっています。有効換気面積の合計4cm2/m2以上または開口面積(見付面積)の合計16m2/m2以上100m2の住宅なら16x100=1600cm2もの開口部になります。これはあまり現実的でないように思えます。自然換気で常時、1年中0.5回/hの換気が出来るのでしょうか。室内空気は窓を開けただけでは換気できません。
【換気の方法】
・温度差換気
・風力換気
・機械換気
気密性能が高くないと機械換気は期待できません。機械換気を風力換気に左右されない必要気密性能は0.7cm2/㎡の相当隙間面積が必要といわれています。
自然換気の圧力分布
建築デザイン / 2010年6月23日
次世代省エネルギー基準と窓
次世代省エネルギー基準では開口部の熱貫流率が4.0Kcal/㎡・h・℃以下になります。
窓の熱貫流率とは、窓面積1㎡あたり内外温度差が1℃の時にガラス面から逃げる熱量をいいます。
【開口部断熱の目的】
・熱の損失を防ぐ ( 開口部から全体の20%の熱が逃げている )
・窓の結露を防ぐ
今の新基準では、5.6Kcal/㎡・h・℃ですから単板ガラスのサッシュでよかったのですが、次世代省エネルギー基準では.0Kcal/㎡・h・℃となるため複層ガラスの使用が必要となります。高断熱、高気密住宅では熱損失係数を計算することで消費エネルギーを算出できます。家をデザインするように開口部の大きさや位置を考え、性能をデザインすることが肝心です。
建築デザイン / 2010年6月22日