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高齢化社会と住宅

我国の65歳以上人口の割合は今後も上昇を続け、今世界のどの国も経験したことのない極めて急速なスピードで高齢化が進んでいます。

国連によれば、65歳以上の人口比率7%以上が高齢化社会と分類されているそうです。日本が高齢化社会に突入したのが昭和45年1970年のことです。それからわずか24年後の平成6年1994年に倍の14%に達しています。ちなみにドイツでは42年、イギリスでは46年、アメリカでは69年、スウェーデンでは82年、フランスでは114年を要しています。人口推移予測では、65歳以上の人口は2000年には2187万人に、2020年には3333万人、27%が65歳以上になるとの事です。

2025年には国民医療費のなかで老人医療費の占める割合は50%を上回るのは確実と言われています。

国民医療費の規模は1999年度で28.5兆円にのぼり、平均で毎年6%前後、金額にして約1兆円ずつ増加しています。1999年度の国民1人当りの医療費は年間約22.5万円かかっています。特に老人医療費は、高齢化に伴い毎年8%前後と高率で増加し、1999年度の統計で11.8兆円にのぼり、老人1人当りの年間医療費82.5万円となりそれ以外の者の約Ⅳ倍にのぼっています。

国民は今、元気で「長寿」であることが望まれています。「長命」でなく「長寿」で元気で健やかに過ごすことが大切です。

医事評論家の水野 肇氏と医師の青山 英康氏の編著「PPKのすすめ」に平均寿命が高く、それでいて1人当りの老人医療費が日本一少なく、平均在院日数も日本一短く、在宅介護の率も高い。元気に生きて、長患いせずに死ぬ、ピン・ピン・コロリ(PPK)が日本一達成されている長野県のことが紹介されています。一読をお勧めいたします。

平成12年2000年の4月から介護保険制度が始まりました。これは在宅介護が基本になっています。

65歳以上の高齢者人口は2000年では2187万人に、2010年には2770万人に、2025年では3240万人と予想されています。その内、要介護高齢者数は2000年では280万人、うち寝たきり高齢者は120万人、2010年ではそれぞれ390万人、170万人、2025年では 520万人、230万人と予想されています。早川 和男氏は著書「居住福祉」のなかで住宅こそ福祉の原点であると訴えられています。

今、住宅が年間100万戸以上も建てられていますが、求められているのは「帰れる家」ではないでしょうか。万が一病気をしそれが安定した時、帰れる家。バリアフリーというと段差の無い家、手摺の付いた家との認識が一般的ですが、弱者にとって一番のバリアーは温熱環境のひどさではないでしょうか。

家庭での65歳以上による死亡原因の1位はスリップ、つまずき、よろめき等による転倒ではなく、なんと浴槽内での溺死、溺水です。これは温度差が原因で起っています。暖かい部屋から寒い廊下を通り、寒い脱衣室で衣服を脱ぎ、裸で寒い浴室に入らなければなりません。寒さで血圧は上昇し脳血管障害の原因となります。浴槽に入れば今度はのぼせ状態となり意識レベルが低下し身体が沈んで溺死となります。

老人のために暖かい住空間を実現しても、それは居住空間のみで廊下、便所、化粧室、浴室等は暖房領域から除外されているいのが現状です。部屋を暖かくすればするほど室内外の温度差がつくため、部屋から出ることはつらい行動になります。部屋からの移動はあたかも屋内から屋外に出たり入ったりしているのと同様のことで、身体調整機能の低下した高齢者にとって、また高齢者だけでなく病気を患っている人、弱者一般にも過酷なことです。

家は本来健康、財産等を守るシェルターで有るべきあり家が原因の死亡事故などあってはならない事です。家の中が同じ温度で出来ていれば温度差が原因の死亡事故など起ることではなく多くの方は死なないで済んだ事なのです。家をシェルターと考えれば家の中はどこも同じ温熱環境であるべきであり、今実現できることなのです。今から住宅の建築を考える人はまず最初に温熱環境を確保し、その上での間取りやデザインであるべきです。寒い家や、暑い家、結露する家、カビ、ダニの発生する家、シックハウスにかかる家など創ってはならないのです。

建築デザイン / 2010年6月17日

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