高齢化社会と住宅
我国の65歳以上人口の割合は今後も上昇を続け、今世界のどの国も経験したことのない極めて急速なスピードで高齢化が進んでいます。
2025年には国民医療費のなかで老人医療費の占める割合は50%を上回るのは確実と言われています。
国民は今、元気で「長寿」であることが望まれています。「長命」でなく「長寿」で元気で健やかに過ごすことが大切です。
平成12年2000年の4月から介護保険制度が始まりました。これは在宅介護が基本になっています。
今、住宅が年間100万戸以上も建てられていますが、求められているのは「帰れる家」ではないでしょうか。万が一病気をしそれが安定した時、帰れる家。バリアフリーというと段差の無い家、手摺の付いた家との認識が一般的ですが、弱者にとって一番のバリアーは温熱環境のひどさではないでしょうか。
家庭での65歳以上による死亡原因の1位はスリップ、つまずき、よろめき等による転倒ではなく、なんと浴槽内での溺死、溺水です。これは温度差が原因で起っています。暖かい部屋から寒い廊下を通り、寒い脱衣室で衣服を脱ぎ、裸で寒い浴室に入らなければなりません。寒さで血圧は上昇し脳血管障害の原因となります。浴槽に入れば今度はのぼせ状態となり意識レベルが低下し身体が沈んで溺死となります。
老人のために暖かい住空間を実現しても、それは居住空間のみで廊下、便所、化粧室、浴室等は暖房領域から除外されているいのが現状です。部屋を暖かくすればするほど室内外の温度差がつくため、部屋から出ることはつらい行動になります。部屋からの移動はあたかも屋内から屋外に出たり入ったりしているのと同様のことで、身体調整機能の低下した高齢者にとって、また高齢者だけでなく病気を患っている人、弱者一般にも過酷なことです。
家は本来健康、財産等を守るシェルターで有るべきあり家が原因の死亡事故などあってはならない事です。家の中が同じ温度で出来ていれば温度差が原因の死亡事故など起ることではなく多くの方は死なないで済んだ事なのです。家をシェルターと考えれば家の中はどこも同じ温熱環境であるべきであり、今実現できることなのです。今から住宅の建築を考える人はまず最初に温熱環境を確保し、その上での間取りやデザインであるべきです。寒い家や、暑い家、結露する家、カビ、ダニの発生する家、シックハウスにかかる家など創ってはならないのです。
建築デザイン / 2010年6月17日